L'ULTIMO BACIO 12/19コンサートレポート
出演者の入念なリハーサルが終わって、開場時間がくる。ルルティモ・バーチョ2日目のロビーは、シックな雰囲気だ。早めに会場に到着したオーディエンスの方々は、思い思いのドリンクを片手に静かに言葉を交わしている。ゆっくり時間が流れて、開演のベルが鳴った。
まずバンドのメンバーが現れ、所定の位置に着く。ゆったりとしたドレス姿で、舞台下手から遊佐未森さんが登場。ピアノの前に座る。少しの間。
音が出る直前の緊張感が漲る。ライブで最もどきどきする瞬間だ。鍵盤に指が置かれて最初の音が鳴り、そしてスムーズな声がガーデホールに流れ出す。それだけで「いいコンサートになる」という予感が会場を満たしたのだった。
遊佐さんの透明な声に、やがてバンドが加わって、ドラムス、ウッドベース、エレキギターのかっちりとしたアンサンブルが歌を包む。
「ベージュ」はそんなステージの始まりにふさわしい曲。続く「通り雨」では、美しいギター・ソロの後にすっと入って来たささやくような歌声が素晴らしかった。
ピアノから立ち上がって舞台中央に立った遊佐さんは、メンバー紹介を交えてこの年末のステージにかける気持ちを語る。ひとつひとつの声や音がみずみずしく、12月の空気にとてもよく似合うライブになった。
休憩をはさんで、スペシャル・アクトはコトリンゴさん。彼女もピアノで弾き語るスタイルのアーティストだ。ジャズをはじめ多種多様な音楽のエッセンスが溶け合った、摩訶不思議でソウルフルなピアノ&ボーカルに会場からは驚きの混じった大きな拍手が贈られたのだった。
「Monochrome&Colours」というタイトルそのままのボーカリゼーションで会場を惹き込む。
その声を引き立てているのは、フェビアン・レザ・パネさんのピアノだ。ガーデンホールに置いてある名器“NYスタインウェイ”が彼の手によって古き良き時代の音を奏でる。そのサウンドが大貫さんの声によく映るのだ。
「la musique 」「横顔」と佳曲が並ぶ。このセットリストでうっとりしない人はいない。
そしてさらにステージに小松亮太さんが現われた。抱えているバンドネオンは、タンゴに欠かせない楽器。椅子に腰掛けてマイクをセットすると、たっぷり時間をかけたバース(前唄)が始まった。
ホールの雰囲気が見る見る変わる。ひと呼吸置いて、大貫さんが「エトランゼ」を歌い始める。優雅な哀愁を含んだシャンソンが、オーディエンスに染み込んでいく。この一瞬が、この日のハイライトだった。
歌い終わって大貫さんが「いろっぽい楽器ですね」と小松さんのバンドネオンを誉める。いや、大貫さんの歌を含めた全体が、いろっぽいのだ。
一度、終わったステージに、拍手が鳴り止まない。
すると、大貫さんと遊佐さんがふたりで舞台に登場。この夜の感動をトレースするように歌ってくれた日本の名曲「この道」が、アンコールだった。
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